世間はこれを三角関係と呼ばない

​すばる

<小6・夏 性別違和のはなし>

◆カミングアウト

瑠卯

「李依ちゃん、嶺君、あの……大切な話があるんだけど……」

 

李依

「なになに? るーちゃんの心は女の子だって話?」

 

瑠卯

「実は……って! 何で知ってるの!? いや、まだそうかもしれないくらいだけど、めっちゃ核心に迫ってるんだけど!?」

 

「俺らからするとバレバレだぞ、瑠卯。『男の子』ってくくられる時ちょっと戸惑ってるし、『女の子?』って言われたときなんか嬉しそうだからな」

 

李依

「他の人は気づかないかもだけど、いつも一緒にいるりぃたちからすると分かりやすいよねー♪ れーとも『そうだよね』って話してたし」

 

瑠卯

「しかもバレバレなことが共有されてた!?」

 

李依

「ちなみにるーちゃんのお母さんも気づいてるよ☆」

 

「『瑠卯の生きたいように生きればいい』って言ってたな」

 

瑠卯

「めちゃくちゃ高いはずのハードルをあっさり超えた!

 え? なにこれ? 話がとんとん拍子に進みすぎじゃない?」



 

◆クエスチョニングとトランスジェンダーと性別違和

「それで、このタイミングで言い出すってことは、中学に入るのが問題になるのか」

 

瑠卯

「うん。……ぼく、制服のズボン、いやかも」

 

李依

「あー、制服ってロコツに男子・女子が別れるからねぇ」

 

「ランドセルの色が割と自由な小学校とは違うよな。瑠卯はエメラルドブルーだし」

 

瑠卯

「そう。パッと見で『男』って周りから思われるのが、やっぱ嫌だなって」

 

李依

「『男と思われるのが嫌』か。『スカートがいい!』ってワケでもでもないんだね」

 

瑠卯

「うん……。さっきも言ったけど、まだ絶対に女の子の方がいいかって言うと、そうは言い切れないんだよね。……ただどうしても男として、男社会で生きていく未来は想像できなくて……」

 

「なるほど。まだゆらぎのある状態か」

 

李依

「なら今はクエスチョニングってやつかもね!」

 

瑠卯

「ぼくにも知らない用語が出てきた!?

 え? 何そのクエスチョニングっていうの? ぼくっていわゆるLGBTのTにあたるトランスジェンダーじゃないの?」

 

「自分が生まれてきた性別とは異なる性別だという確信……まあこの当てはめ方もいろいろ議論はあるんだが、まあそんな感じで自分の性はこれだと帰属意識があれば、いわゆるトランスジェンダーだろうな。

 でも確信はないみたいだし、瑠卯みたいな性の在り方に疑問があって、自分の性が分からない状態としてクエスチョニングという分類がある」

 

李依

「医学的な用語でいう性別違和(GI)にはなるだろうね! 専門のお医者さんに行けば診断書が出るし、ホルモン療法もできるよ!」

 

瑠卯

「すごい! 二人とも、どこまで行っても当人であるぼくより詳しい!」



 

◆性ホルモンと二次性徴抑制ホルモン

「ホルモン療法の話が出たから、聞いてもよければなんだが、瑠卯は自分の体にも違和感はあるのか? 男性器が嫌いだとか、胸が大きくなって欲しいとか」

 

李依

「ムキムキゴツゴツモリモリマッチョマンにはなりたくないとか?」

 

瑠卯

「ムキムキゴツゴツモリモリマッチョマン!?

 そう、だね……。手術までして体を変えたいかっていうと……まだよく分かんない……」

 

「まあまだ小学生で、そんなに男女差がないからイメージしづらいか」

 

李依

「じゃあさ、大人の人を思い浮かべてみて。こうなりたいとか、こうはなりたくないとかある?」

 

瑠卯

「うーーーーん……。少なくともさっきのムキムキゴリゴリ? みたいな男らしい体つきにはなりたくないかな?」

 

李依

「なら二次性徴抑制ホルモンだね!」

 

瑠卯

「二次性徴抑制……! そんなのあるの?」

 

「ああ。その名の通り抑制するものだから、止めたら二次性徴は再開する、いわば後戻りの利くホルモンだ。

 女性らしい体つきにする女性ホルモンだと、ある程度打つと一生後戻りできないけどな」

 

李依

「ホルモンはカンタンに手を出すものじゃないって言われるけど、こっちは思春期の当事者にもおススメしやすいよね♪ まさに今のるーちゃん♪」

 

瑠卯

「そうなんだぁ……。ぼく、それやりたいなぁ」

 

「ただし、なかなかに割高だ」

 

瑠卯

「うっ……! お母さんに相談してみる……」

 

李依

「るーちゃんママなら絶対ダイジョブだよ♪」



 

◆当事者に寄り添う人として

瑠卯

「それにしても二人ともよく調べるよね! もしかしてぼくがそうかもと思って、調べててくれたの?」

 

李依

「もっちろん♪ るーちゃんが自分から言い出した時はサイキョーの味方になってあげたかったし!」

 

「セクシャリティの問題の多くは周囲との調和の問題をはらむからな。逆に身近な人の受け止め方次第でかなり生きやすくなる。俺たちは当然瑠卯の力になるさ」

 

瑠卯

「李依ちゃん、嶺くん……! ほんとにありがとう! ぼくの力になってくれてうれしいよ!」

 

李依

「普段はりぃたちが引っ張りまわしてるからね! るーちゃんが前に進みたいときには、思いっきりサポートするよ! まっかせなさーい♪」

 

「俺達は本やネットで勉強したけど、だからってそれを絶対の正解だって思ってるわけじゃない。目の前の瑠卯自身が何を望んでいるかを大切にして、じっくり寄り添っていくさ」

 

李依

「女の子の服が着たくなったらりぃの服貸してあげるからね☆」

 

瑠卯

「その時はよろしくね」



 

◆ステレオタイプにとらわれない

「まあ言い出さなくても辛い思いしないようにって、性別がどうこうって言わないようにしたけどな」

 

李依

「それは相手がるーちゃんかどうかに限らずだけどね! りぃも『女の子なんだから大人しく』だなんてまっぴらごめんだし!」

 

瑠卯

「うんうん。大人しくしてる李依ちゃんは李依ちゃんらしくないよね」

 

「それが李依という人間の個性なんだから、そのままでいいよな」

 

李依

「アリガト二人とも! 今りぃの自己肯定感は、メガマックスでダイマックスだよ♪」

 

瑠卯

「でもそっか。『男なんだから○○』『女なのに○○』みたいな役割のイメージって、ぼくみたいな人じゃなくても窮屈に感じちゃう人が多いんだね!」

 

「もっと言うと性別だけじゃなく、『○○だから』の時点で固定概念バリバリだな。日本人だらかって、米よりパンが好きでも何の問題もない」

 

李依

「コテコテした関西弁だからって、シャレや軽いノリが通じるかは分からないよね……」

 

瑠卯

「何か大失態をやらかした人の反応だこれ!」



 

◆制服どうするの問題

「でだ、肝心の中学の話だ。俺たちも当然瑠卯と同じ学校にしようと思うが、制服が嫌という話だったな」

 

瑠卯

「うん。。どうしよう……」

 

李依

「最近は制服をスカートかスラックスか選べるってところも増えてるよねー。……まあ選べるのは女子だけだったりするけど」

 

「しかしそれが誰しもに最適というわけでもないんだよな。

 たとえば一度スカートで登校という選択をしてしまうと、周りからのイメージが固定されてしまうからな。まだゆらぎがある瑠卯なんかの場合、後々その時のイメージに苦しめられる可能性もある」

 

李依

「この辺、私服校とかあるっけ?」

 

「あまりにも荒れすぎて、事実上校則が崩壊してるところならあるな」

 

瑠卯

「できればそこは通いたくないかな……」

 

李依

「学力よりボーリョクがものをいう中学はりぃもイヤ……」

 

「俺も嫌だし、そこに瑠卯を通わせたくない。

 だが救いはある。瑠卯は『スカートがいい』じゃなくて「制服を男女で分けられるのが嫌」だろ? ならジャージ登校をすればいい」

 

李依

「あーっ! 南中! あそこなら部活ない人もジャージ通学できるし、ジャージのデザインも男女一緒だから服装で性別を決め付けられないじゃん!」

 

瑠卯

「いいねそれ!

 でもさ、実際にはほとんどの人が制服で通ってるなら浮いちゃいそうじゃない?」

 

「大丈夫だ。あそこはむしろ制服を着てる方がはるかに少ない」

 

李依

「なぜなら制服がダサくてみんな着たがらないから!」

 

瑠卯

「ネガティブな理由だった!」

 

「ジャージの方が楽だからって意見も多いだろうしな」

 

瑠卯

「おお! それなら大丈夫そう! ぼく、そこがいい!」

 


 

◆選択肢があるということ

「しかしこうして学校にしろ制服にしろ、自分で環境を選べるというのはちょっと前にはできなかったことだ。今の時代に生まれてよかったよな」

 

瑠卯

「ぼくみたいな押し付けられるのが嫌な人は特にそうだよね」

 

李依

「たまたま家が近いからって、世紀末校に通わされたら地獄だよね」

 

瑠卯

「世紀末校!? 校則が崩壊どころか法律も崩壊してそう!」

 

「校則も結構問題になるよな。地毛が茶色いのに黒く染めるのを強要されたり」

 

瑠卯

「目的と手段が逆転しちゃってる感あるよね。守るために校則はある、みたいな」

 

「それを守っても学力は上がらないし、社会性が身につくわけでもないのにな」

 

李依

「男はボウズ、女はおさげ、みたいな学校、りぃは絶対ごめん!!」

 

瑠卯

「それはさすがに前すぎるんじゃ……」



 

◆あいまいさを肯定する

李依

「大人ってこれが正解だ! みたいなのを教えようとしてくるけど、割とツッコミどころだらけだったりするしね」

 

「その大人が育った社会ではそれが正解だと“されていた”んだろうけど、判断基準は時と場合に拠るからな。価値観のアップデートがなされていないと、頓珍漢なことになりかねない」

 

瑠卯

「ぼくも知ってるところだと、今のスマホは電波の波長が違うから心臓のペースメーカーには影響を与えない、とかあるね。

 昔は電車の優先席とか病院内は電源オフだったんでしょ?」

 

「今はWi-fiが飛んでて、入院中にスマホでネット見たりしていい病院も多いな」

 

李依

「変化に合わせられる柔軟性が大事! 四角いアタマをふにゃふにゃにしろってことだね!」

 

「そうだな。性別にしても、ゆらいでいいものだという認識があるのとないのじゃ心の持ち方が違う」

 

李依

「自分は何々だーって思いこむと、そのイメージにとらわれちゃうからね」

 

瑠卯

「それがまさにぼくが“男”に当てはまれなくて苦しんだ部分だもんね」

 

「そう。だからといって“女”に当てはまる必要もないし、“トランス”や他の何物にもあてはまらなくていい。

 そんなあいまいな存在でも自分は自分なんだというアイデンティティを持てば強く生きられる」

 

李依

「さらに言えば“クエスチョニング”という言葉にもとらわれなくてもいーし、逆に一生結論を出さないのもアリだね!」

 

瑠卯

「うん! ぼくはこれからあいまいな“ぼく”を生きるよ!」





 

<中2春・性別を割り当てられない社会>

◆自分にとっての最適な居場所

李依

「さて、今年もみんな別々のクラスになっちゃったけど、どう? 今のクラスやってけそう?」

 

「李依はコミュ力高そうだし、どこでも問題なさそうだよな」

 

李依

「もち☆ 今日もいっぱいお誘いあったけど、みんな断ってきちゃった!」

 

瑠卯

「そうなんだ。ぼくたちのために時間使ってくれてありがとね! 嶺は?」

 

「俺はもちろん、お前ら以外には本しか友達がいない」

 

瑠卯

「やっぱり、わざわざ人間関係広げようとしないんだね」

 

「李依みたいに俺に好奇心の続く限り話しかけ続ける人もいなければ、瑠卯みたいに夢中になりすぎた俺を止めてくれる人もいないからな。いつも通り孤立するだけだ」

 

李依

「ナイスいつも通り! るーちゃんは? るーちゃんは!?」

 

瑠卯

「うん、1年の時いつも一緒だった子がいるから問題ないよ」

 

李依

「あー、あのろーちゃんね! 浮き沈みがなくてほんわかしてて、るーちゃんと波長が合いそうだよね」

 

「4組の癒し空間とか言われてた、あのコンビは継続するんだな。それならむざむざぶち壊しに来る輩もいないだろうし、安心だ。

 みんなそれぞれに居場所は確立できたようだな」

 

瑠卯

「嶺のそれは居場所と呼ぶの……?」

 

「黙々と本に集中できる居場所を手に入れたんだ。それが俺にとってのいい環境だ」

 

李依

「ならいっか♪ 居場所って落ち着くためにあるんだし!」

 

瑠卯

「本人にとっての落ち着ける場所なら、それでいいか!」



 

◆周りからの見え方

李依

「ってか最近よく告白されるんだけどさー」

 

瑠卯

「李依ちゃんさすが! 学校中の人気者だもんねー」

 

「そこに自慢も謙遜も微塵も含んでないあたり、李依が俺たちにフラットでいてくれてるって証拠だよな」

 

李依

「まあね! いつも断るんだけどさ、やっぱり聞かれるわけよ、『れーのことが好きなのか?』って」

 

「まあそう見られるか」

 

瑠卯

「中学になってから、男女ってだけでそういう目で見られがちだよねぇ」

 

李依

「みんなコイバナ大好きだもんねー」

 

瑠卯

「っていうかぼくは対象だと思われてないんだね」

 

李依

「うん。るーちゃんはあたしとれーで面倒を見てる子どもみたいな扱いみたい」

 

「おかしいよな、実情は俺らが面倒見てもらってるのにな」

 

李依

「ね!」

 

瑠卯

「おかしいポイントはそこだったの……?」



 

◆二次性徴の抑制

瑠卯

「まあぼくも周りの男子とは差が出てきたなって思うよ。……親子ってレベルじゃ決してないけど」

 

李依

「せー自体はちょっと伸びたけど、それだけって感じだよね」

 

「俺みたいに“男”って感じにはなってきてないよな。二次性徴がちゃんと抑えられてるんだろうな」

 

瑠卯

「うん。ホルモンのおかげだね! お金出してくれてるお母さんに感謝しないとね!」

 

李依

「るーちゃんママはるーちゃんがカワいくて仕方ないからね。愛される子に育ったるーちゃんもエラいよ!」

 

「親に限らず、いざという時に人を味方につけることができるかは日頃の態度に拠るからな。瑠卯が真面目に生きてきた成果だ」

 

瑠卯

「二人ともぼくの親みたいなコメントありがとう。

 今のところまだ周りにも二次性徴来てなさそうな人いるけど、だんだん一人だけ目立つようになってくるのかな……」

 

「周りが大人の男性、大人の女性に近づく中で、一人だけ子どもでい続けるわけだからな」

 

李依

「その時は晴れてあたしたちのコドモを名乗れるね!」

 

瑠卯

「名乗れないよ!? 事実じゃないよ!?」



 

◆男子と“男ならざるもの”

李依

「まあ実際、変わったこともあるよね。音楽だったり、体育だったり」

 

「その科目についてはどうしても性差が出てしまうな」

 

瑠卯

「もう体育は何やっても勝てないよ……」

 

「男子だけの輪に入れられることによって、“男”ではない瑠卯の貧弱ぶりが顕著になったな」

 

李依

「体のこと抜きにしてもおよそ闘争心とか、攻撃性がないるーちゃんには馴染めない世界だよね」

 

瑠卯

「うぅ……! 全部軽いランニングとかストレッチだけだったら、別に体動かすのは嫌いじゃないのに!」

 

「俺もそっちの方がいいな。適度であれば健康の維持に欠かせないし、脳も活性化する。が、筋肉を酷使するほどの運動はする意味が分からん。現代社会で筋力がものをいう場面など、そうないだろうに」

 

李依

「チームスポーツだと二人とも役立たずのジャマ者扱いだよねー」

 

「俺みたいに無関心を貫けない人間は劣等感を植え付けられるだろうな」

 

瑠卯

「ぼくみたいな『運動はしたいけど体育は嫌い』みたいな人多いと思うよ……」

 

李依

「逆に女子だとカケラもやる気ない人が結構いて、思いっきりやりたいあたしが恐怖の大王扱い」

 

「李依は手を抜くことを知らないからな」

 

李依

「もち!」



 

◆男と女と“男ならざるもの”

李依

「音楽の場合だと、合唱ならるーちゃんは当然女子パートに入れられてるよね?」

 

瑠卯

「そうだね。男子の中にいるより馴染んでるってよく言われる」

 

「合唱の場合、同じ場にいて男女が二項対立になるからな。どうしてもどちらに属するかという判別が発生する」

 

李依

「るーちゃんの嫌がってる『性別への割り当て』が起こる場面だね」

 

瑠卯

「うん。ぼくの場合は男側に入れられてなければ、そんなにしんどくもないかな」

 

「かと言って女側が理想的、という訳でもないと言ったところか」

 

瑠卯

「うん。やっぱり李依ちゃんと嶺、二人と一緒にいる時が一番だからね」

 

李依

「ウレシイこと言ってくれちゃって♪」

 

瑠卯

「うん。だから『男と女とかの区分がそもそもない』空間の方がいいかな」

 

「やはりそこが大きな壁だな。大人社会のシステムとして区分けが用意されているから、多くの人は自然とその基準で判断することを当然と思ってしまうんだな」

 

李依

「周りの人がそう言ってるからそうなんだろーなーって、刷り込まれちゃうわけだね」



 

◆ライフモデルのない生き方

瑠卯

「刷り込みかぁ。やっぱ異性と恋愛して、結婚して、子供を残すのが当たり前のものとして思われちゃってるよね。僕にはできそうもないなぁ」

 

「世間的なライフモデルが性別二元論で、異性愛かつ子供が欲しい人を前提に築かれているからな。将来像が描けないのもやむを得ない」

 

李依

「異性かどうかはともかく、恋愛できなさそう?」

 

瑠卯

「うーん……。やっぱそこに彼氏としての役割、彼女としての役割みたいなのを求められると、できる気がしないねぇ」

 

「恋愛の形はそれぞれとはいえ、求めるものが違えば破局へ向かうしかないからな」

 

李依

「恋愛に限らず、ずっと一緒にいるなら双方向の求めあう関係でないとねー」

 

瑠卯

「あ、でも子供は欲しいかも! 育ててみたい!」

 

李依

「るーちゃんが子育てしたら、しっかりした子になりそう!」

 

「包容力があって面倒見がいいからな。素直な子になるだろう。

 では瑠卯、その子供だが、自分と血が繋がってなくても大丈夫か?」

 

瑠卯

「え、まあ……うん。ぼくの子どもを残すとしたら男らしくなるのを受け入れなきゃいけなくて、そうすれば男の骨格ができて、、もう二度と今のようにはなれないし……。それに妊娠と出産の苦しみを女性に押し付けるが、ぼくにはきっと耐えられない。。。」

 

李依

「うんうん、るーちゃんは優しい子だからね。他人の痛みは引き受けたいけど、自分のために人が苦しむのはイヤだよね」

 

「そうだな、理解した。自分の子どもを残さないと判断した時点で、ライフモデルに拠らない自分なりの生き方というものを模索する必要がある」

 

瑠卯

「うん……そうだよね」

 

「そこで提案だ。俺と李依の子どもを育てないか?」

 

瑠卯

「えええええええええ!!!?? え!? なになに!? もしかして二人は付き合ってたの!?!?!?」

 

李依

「いや、あたしもはじめて聞いた。でも乗った!」

 

瑠卯

「本人の承諾なしだった!? しかも秒でOKもらった!!?」



 

◆親愛感情で結ばれる関係

「俺は一人では知識欲に溺れるだけで、得たもの全てを自分の中に溜め込んで、それで終わりの存在だ。

 でも李依がいるからそれを整理できて、外に出すことができて、そして初めて世の中に繋がりを持てるようになる。

 そして瑠卯がいることによって初めて自分の限度を知り、さらなる可能性もあるのだと感じられる。

 俺にとって瑠卯も李依も、大事で失いたくない存在。それが確かならそこに当てはまる言葉はなんだっていい」

 

李依

「あたしも。

 あたしは聞けばなんでも答えてくれるれーがいるから、この好奇心を爆発させられる。でなきゃ落ち着きのないイタい子認定になっちゃうよ。

 そんな突っ走りがちなあたしたちをるーちゃんが止めてくれなかったら、あたしたちは本当に止めることができない。

 るーちゃんとれーどっちか片方とでも離れるなら、恋愛なんてしなくていい。三人でずっといることがあたしの幸せ」

 

瑠卯

「嶺、李依ちゃん……」

 

「どうだ、瑠卯?

 俺たちができることなんて、ただ、お前の在り方を肯定してやることしかない。でもそれだけは絶対に、未来永劫保証する」

 

李依

「もしるーちゃんがこれからどんな生き方を選んだとしても、るーちゃんママも含めて助けになってくれる人は絶対いる!

 でもサイキョーの味方の立ち位置だけは、絶対絶対ぜーーーーったい譲らないから!!」

 

瑠卯

「二人とも、ぼくのことを本当に思ってくれててありがとう……!

 ぼくは将来どうなるか、本当に分からない。李依ちゃんみたいなかわいいファッションを始めるかもしれないし、嶺みたいに外見に無頓着に生きるかもしれない。ひょっとすると、このままあいまいな所をフワフワしたままかもしれない。

 でもこれだけは分かる!

 自分の好きなことに一生懸命になれる、そんな二人の姿にぼくは憧れてる! ずっと二人と一緒に生きていけるなら、そんな幸せなことはないよ!!」

 

李依

「じゃあ無事、三角関係成立だね♪」

 

瑠卯

「なんか悪いことしてる気になるね、その言い方」

 

「問題ない。三方の合意が取れているのだから、恋愛関係だろうと同盟関係だろうと不誠実なものではない」

 

李依

「コソコソ隠れてやったりとか、どっちつかずな態度だったら崩壊するけど、あたしたちは全部オープンだから問題ナッシング!」

 

瑠卯

「うん。ぼくたちの場合だと、恋愛関係じゃなくて、信頼関係……いや、親愛関係かな?」

 

李依

「それだ!!」



 

◆世間はこれを三角関係と呼ばない

「古くから三人寄れば文殊の知恵と言われているし、三本の矢の伝承も二人兄弟なら語られていないだろう。数学的にも点が3つあって初めて形を描くことができる。3というのは安定のために必要な数だ」

 

李依

「うん、間違いない! あたしら3人は、3人でサイキョーの三角形なんだ!」

 

瑠卯

「これからもぼくたち3人、ずっとずっと仲良くやっていこうね」

 

「さて、これから俺たちの道には進学・就職が待ち受けているわけだが、何か考えていることはあるか?」

 

李依

「あたしはるーちゃんとれーがいれば、どんな場所だって生きていけるし、何だってできるよ!」

 

「俺もだ。となると瑠卯の生きやすい、負担にならない環境を選ぶのが最善だな」

 

瑠卯

「うーん……。じゃあ服装が自由で、男でも女でもない生き方の受け入れ実績がある高校ってあるかな?」

 

李依

「みんなが自分らしくいられる場所だね!」

 

「なるほど。一つ心当たりがあるな。群馬県にある私立高校なんだが、校風の自由さが全国でも群を抜いていると評判だ」

 

李依

「へー! よさそーだね♪」

 

瑠卯

「なんて言うとこなの?」

 

「ああ、人呼んで『性別不問の由律学園』だ」





 

~もう一作、『性別不問の由律学園』もよろしくお願いします~

ちなみにジャージ通学の話は、作者の出身中学そのまんまです。